寒がりのマニーのため、冬場リビングの室温はいつも高めに保たれている。
シャツの第三ボタンを新たに外してディエゴは温くなったコーヒーを胃に流し込み、黄茶がかった金髪を後ろに撫でつけた。

「……暑い」
「文句ならオレじゃなくて、そこで寝てる奴に言ってくれよ」

熱心にバラエティー番組を視聴するシドが顎で示したその先には、三人がけのソファを独占して眠るマニーの姿。 判ってる、とディエゴが舌打ちをする頃にはとっくにシドの意識はテレビ画面に吸い取られていて、ディエゴはまた一人手持ち無沙汰になってしまう。仕方なく彼は、マニーに毛布でも掛けてやるかと自分の寝室へ向かった。

「あれ、ディエゴもここで寝んの?」
「馬鹿も休み休み言え……マニーに掛けてやるんだよ」

リビングに戻るとちょうどテレビはCM中で、シドは冷蔵庫から氷を浮かべたサイダーを取り出してきた所だった。 早くもそのグラスが汗をかき始めていることを認めたディエゴが少々ばつの悪さを感じながらも答えると、案の定シドは大袈裟に両目を丸くする。

「こんなに暖かいのに?」
「こいつなら、これでちょうどいいくらいだろ」
「……甘いなぁ。ディエゴ」
「なに?」

ただでさえ目つきの悪いディエゴにぎろりと睨まれても動じることなく、へらへらしながらシドはテレビの前にさっさと戻ってしまった。再度舌打ちを洩らしながらもしっかり持ってきた毛布はマニーに掛けてやり、それを誤魔化すようにその後ディエゴはエアコンの設定温度を二度ほど下げた。