「マニーさぁ。自分のこと私、って言うのよせば?ずっと会社にいるみたいで肩こんない?」

今日も今日とて余計なお喋りを始める居候。上司と電話でやり取りしていた所を興味深げに見守られ続けて煩わしかった。周囲に視線を走らせるも部屋に戻ったのか押しつけ先、もといディエゴの姿は無い。

「家ではオレでいいじゃん。オレで。使い分けろよーオンとオフは切り替えろよー」
「ほっとけ。仕事先と同じでいた方が間違いないだろ」

下げたテレビの音量を戻すがシドの興味はもうそこに向かない。
ソファから身を乗り出し、顔を覗きこんでくる。

「いつからそうなの?ちっちゃい頃からずっとじゃないよね?」
「いつから……」

隠すほどではないが、いちいち話したくもない経緯。
思案するふりをして多少の時間を稼ぐもシドの好奇心はやはり他に移らず、適当なごまかしなり嘘なりを考え出す小賢しさをマニーは持ち合わせていない。仕方なく、偽り無い事情を口にした。

「おれ、だった。学生のときまでは」
「へー!それが何で?」
「…就職先を探す時期になって、その時に習慣づけるようにしたら、完全に癖になって……。戻らなくなった」

聞いた瞬間の、シドの表情。それを的確に表せる語をマニーは知らない。
近いものを挙げるなら失望、落胆、拍子抜け、鼻白む、とそんなものだろうか。
予想はしていた。しかし実際目にしてしまえば腹が立つ。

「シド。つまらなそうだな」
「え?あぁううん、つまんなくはないよ。ある意味おもしろい。不器用なのは知ってたけどさぁ、マニー、実は天然?ぶっちゃけアホ?」
「誰がアホだお前にだけは言われたくない!」
「じゃあディエゴにしてもいいんだ?今の話」
「……やめろ」
「シドさまやめてくださいお願いします、って言ってくれたらやめてあげる」

ソファに置いてあったクッションがシドの顔面へ直撃するまで、それから三秒とかからなかった。

* * * * *

あの性格あの口調で一人称は私、なマニーが妙に好きです。2の翻訳者さんグッジョブ!
なので最近、3でまた一人称変わっちゃってたらどうしようかなんてこともよく考えるんですが…自分のことですから、たぶん結局好き勝手いいとこどりするんだろうと思われます。